1月8日(土)放送:『嗚呼わが愛しの駒形通』/公募作品

『嗚呼わが愛しの駒形通』

美音子・作

朝。起きてみたら、なんだか疲れが溜まっている、気がする。こんな時は、そう、銭湯だ。思い立ったが吉日、すぐさま準備に取り掛かる。タオルに、ペットボトルの水かお茶。向かう場所も決まっている。葵区は駒形通にある銭湯・「桜湯(さくらゆ)」。昔ながらの共同浴場というのは、静岡にはもう二軒しかない。そのうちのひとつが桜湯だ。そうだ、駒形通へ行くなら、ついでにやることがある。

今回の戯曲のメインは、お風呂へ入ること、そして買い物をすることである。まずは家族や同居人に、なにか買ってくるものがないかを聞こう。一人で暮らしている人は、自分におつかいを頼むつもりで。わざわざ紙に書き出して、大切にポケットにしまおう。買い物袋も忘れずに。さあ、準備ができたら、いざ出発。

駒形通のスタートは、七間町の交差点を過ぎて、セブンイレブンを超えたところから。まずは角のところの料理屋さんできょうのランチメニューをチェックしたり、すてきな純喫茶のかわいいプリンに心惹かれたりしながら商店街を進み、ついに桜湯に到着。暖簾をくぐり、靴を下駄箱に入れたら、引き戸の先の番台さんにおとな料金440円を渡して、いよいよミッションの始まりだ。あ、脱衣所のロッカー番号をお忘れなく。きょうはそれがあなたのナンバーだ。
桜湯はシンプルな銭湯だ。壁に富士山もないし、同じ温度の風呂釜がふたつあるだけの銭湯。それがまたいい。掛湯は左肩から。身体も左腕からさっと洗おう。お風呂には左足から入ってみる。そうしたら、きょうは、ロッカー番号の数字のぶんだけ、数を数えて湯につかろう。もちろんそれ以上浸かっていてもいいし、暑くなったら上がってもいい。壁に貼られた湯の効能をゆっくりと目で追いながら、さも気持ちよさそうに腕を風呂釜のふちにかけて。

ひとしきり堪能したら、水分を補給しつつ、番台さんに上機嫌で「良い湯でした」と伝えよう。再び暖簾をくぐり、いよいよ駒形通商店街のメインロードへと繰り出す。所せましと商品が並ぶまちの薬屋さんで救急箱の中身を補充したり、二つの八百屋さんで野菜やくだものを見比べたり、総菜屋のお母さんと立ち話でもしてちょっと一息ついたり。たまにはネパールカレー屋さんで冒険するのもいいな。ああ、あのベーカリーのパン、良い香り。そうそう、オルゴールの音につられて道を曲がると、なんともかっこいい店構えのお肉屋さんがあるんだよね。もうひとつ見えてきた果物やさんでじぶんへのご褒美フルーツなんかも買っちゃおうかな?…そんなこんなで、気づけばあちこち見て回って、どっさり買いこんじゃっても、きょうは大丈夫。朝のもやもやもどこかへいって、今はきもちのよい疲労感。今度来たらあれを買ってみようかな。そんなことを思いつつ、家へと帰る。また家でもお風呂につかって、贅沢な二度風呂。ごくらく、ごくらく。

きょうはいい日、明日もきっと。


聴き直し

当日の放送は以下You Tubeまたはradkoタイムフリーから聴くことができます。

今回の戯曲を読み上げてくれたのはSPAC-静岡県舞台芸術センターの俳優・大内智美さん。ご自身も駒形通商店街を実際に訪れたことがあるそうで、街を歩く主人公の視点から商店街の情景を、臨場感ある語りで描き出してくれました。

今回の舞台

これまで『きょうの演劇』の戯曲はプロジェクトチームが書いていました。ですが今月2020年1月は、2021年10月に実施した戯曲の公募でリスナーさんから届いた作品や、ワークショップから生まれた作品をお送りしていきます。記念すべき第一弾は、静岡市在住の美音子(みねこ)さん。

タイトルにもなっている駒形通商店街は、七間町や常磐公園の南にある、昔ながらの活気ある商店街。戯曲にも登場した通り、魚屋・八百屋・酒屋・米屋・パン屋・惣菜屋・日用雑貨店・衣料品店・喫茶店などなどここに来れば生活必需品はなんでも揃うくらいお店の種類が豊富。いつでも地元の人たちでにぎわっています。

そんな駒形通商店街にある「桜湯」は昭和2年創業、静岡市内に2軒だけ残る銭湯のうちのひとつ。現在の建物は50年以上に建てられ、下駄箱や脱衣所、浴場には昭和の雰囲気がそのまま残っています。2階には男性専用のサウナもあり、常連さんたちに愛される昔ながらの銭湯です。作者の美音子さんも以前このあたりに住んでいたそう。放送にあたって、美音子さんにいただいたコメントを紹介します。

「はじめまして、美音子です。毎週、読んでは聞いて上演していた『きょうの演劇』に、こうして作者として関わることができるなんて。よそからきたわたしにとって、第二のふるさとである静岡。そのなかでも、いつでもあったかく迎えてくれる大好きな駒形通りを題材にしました。楽しんで上演していただけると嬉しいです。」

桜湯(さくらゆ)

住所:〒420-0042 静岡県静岡市葵区駒形通3-2-1
営業時間:14時〜23時30分(最終受付23時)
定休日:火曜日

上演のコツ

戯曲の主人公のように、ちょっとお疲れの自分を元気にしてあげるつもりで、駒形通りに出かけてみましょう。桜湯に行って、お風呂で下駄箱の数字の数だけ数えてください。のんびり浸かりたい人はゆっくり数えたり、暑い人は大急ぎで数えてもいいと思います。

帰りは駒形通り商店街をのんびり散策してみてください。戯曲に登場するお店を探しながら歩くのも楽しいはず!

放送当日には、駒形通や桜湯に思い出のある方たちからTwitterで反応をいただきました。また番組でもときわ公園のそばで生まれ育ったという方からのメッセージが読み上げられ、いろいろな方の思いがつまった場所なのだなとプロジェクトメンバー一同、改めて気付かされました。

ひときわ寒さが身に染みる季節。ぜひこの機会に、改めて足を運んでみてはいかがでしょうか。

上演して(やって)みたよ! で、どうすればいいの?

きょうの演劇では「こんなふうにやってみたよ!」という体験談や、感想を募集しています。ラジオネームと、やってみた人は写真を添えてTwitterInstagramで投稿してください。

実際に現地を訪れてみた人は、桜湯の外観や、商店街の写真や動画と一緒にぜひ、報告してください。(※銭湯内は撮影禁止なのでご注意ください)

SNSに投稿する際はハッシュタグ「#きょうの演劇」を添えてください。「きょうの」はひらがな、「演劇」は漢字です。メール kyonoengeki☆gmail.com(☆を@に変えてください)またはフォーム でも受け付けています。

お送りいただいた体験談は、ラジオまたは『きょうの演劇』公式ウェブサイトまたはSNSで紹介させていただきます。

次回予告

来週1月15日(土)は、「きょうの演劇の作家になろう!ワークショップ」から生まれた作品『トンネル』をお送りする予定です。どうぞお楽しみに!

 

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