1月22日(土)放送:『大火の記憶と出会う』/公募作品

『大火の記憶と出会う』

伊藤允彦・作

あなたは今、静岡市役所を出て、常磐公園に向かって歩いています。

あなたの目に映るのは、まっすぐ通る広い空間。

ここは、青葉シンボルロード。静岡市役所から常磐公園まで真っ直ぐ伸びる、幅36m、長さ520mの道のような公園。

イルミネーションに彩られ冬の夜景に輝くこの通りを歩いてみると、多くの人たちが久しぶりに集い、笑顔を浮かべ憩いのひとときを過ごしていることでしょう。

青葉シンボルロードを歩いていると、水が流れ続ける四角くて黒いモニュメントに、子ども達が恐る恐る手を伸ばしている姿が目に入るかもしれません。

ここは、道、それとも公園?どうしてこんなにも広い空間がまちの真ん中にあるのでしょうか?おじさんとおじさんがぶつかりそうになりながら挨拶をしている彫刻のように、せっかくですから青葉シンボルロードの成り立ちに、出会ってみませんか?

たくさんの店が並び、多くの人たちで賑わう静岡の中心街、「おまち」

ここは、昭和15年の静岡大火や、昭和20年の静岡大空襲により、かつては何もない焼け野原になったことがあります。

文字通り全てを失った人々は、この災いが再び訪れることがないよう、もう一度大火が起きた時、それ以上燃え広がらないように、火の流れを絶つ広い空間をつくりました。

月日が経ち、駐車場になったりしながら、この空間は、人々で賑わう青葉シンボルロードになりました。

今この場所では、もう一度みんなで賑わえる日々を願い、多くの人たちがイルミネーションのもとに集まっています。

かつて、焼け野原の上に立った人たちは、いつか再び訪れる賑わいを目指して、この場所に大きな空白をつくりました。大火の記憶が、ここには眠っています。

イルミネーションが消えた、朝早く、あるいは夜遅く、あなたの生活のリズムに合わせて、あなたが人がいないと思う時間帯に、青葉シンボルロードへ足を運んでみてください。

そこで、誰もいない青葉シンボルロードを写真に収めてください。この広い空間をつくった人々の願い、大火の記憶にふれてみてください。


聴き直し

当日の放送は以下You Tubeまたはradkoタイムフリーから聴くことができます。

今回の戯曲を読み上げてくれたのはSPAC-静岡県舞台芸術センターの俳優・大内智美さん。人々の憩う現在のまちの風景と、かつて災害に見舞われたまちの歴史との対比を表現してくれました。

今回の舞台

これまで『きょうの演劇』の戯曲はプロジェクトチームが書いていました。ですが今月は、2021年10月に実施した戯曲の公募でリスナーさんから届いた作品や、ワークショップから生まれた作品をお送りしていきます。第三弾は、伊藤允彦さんの作品です。

今回の舞台は、青葉シンボルロード。全長約500m、静岡市役所と常磐公園を結ぶ、ケヤキ並木が美しいメインストリートです。道路の真ん中が公園になっており、大道芸やマルシェなど様々なイベントが開催されています。毎年この時期はイルミネーションで彩られ、30年以上も続く、静岡の冬の風物詩になっているそうです。

現在も2月13日まで、コロナ禍の収束を願ってイルミネーション「おまちワンダーランド」が16:30〜22:00まで点灯しています。

実はこの青葉シンボルロード、昭和15年の「静岡大火」という大火事によって生まれた通りです。昭和15年1月15日、深夜に起こった大火災によって静岡市の中心市街地は大きな被害を受けました。当時の静岡はまだ江戸時代の町割りが残り、木造の建物も多い、火事に弱いまちでした。そこで防火帯、つまり火災が起こったとしても燃え広がるのを防ぐ空白地帯として造られたのが、この青葉通りなのです。

放送にあたって、伊藤さんからいただいたコメントを紹介します。

「私たちが住むしずおかは、多くの人が暮らし、その人生を終えてきました。まちのかたちには、かつてここに住んでいた人たちの息づかいが残っています。何気なく通っているまちの姿をいつもと違う時間で見つめてみて、その痕跡にふれてみませんか?」

青葉シンボルロードのイルミネーションの様子(作者の伊藤さん提供)

上演のコツ

朝でも夜でも、ご自分の生活リズムに合わせてできるだけ人の少ない時間帯に、青葉シンボルロードを訪れてみてください。

青葉シンボルロードが生まれた背景や、当時、災害からの復興を願ってこの通りを造った人たちの思いを想像してみてください。
その、誰もいない青葉シンボルロードの写真を撮って投稿してください。

お店やオフィスも多いエリアなので「よくここを通るよ」「イルミネーションを見かけるよ」というリスナーさんも多いと思います。そういう方は、ぜひ一度足を止めて、大火の記憶や、当時の人たちの思いを想像しながらイルミネーションを眺めてみると、いつものまちと違って見えるかもしれませんね。

上演して(やって)みたよ! で、どうすればいいの?

きょうの演劇では「こんなふうにやってみたよ!」という体験談や、感想を募集しています。ラジオネームと、やってみた人は写真を添えてTwitterInstagramで投稿してください。人のいない時間帯であれ、イルミネーションであれ、青葉シンボルロードの写真と一緒に、感じたことをシェアしていただけると嬉しいです。

SNSに投稿する際はハッシュタグ「#きょうの演劇」を添えてください。「きょうの」はひらがな、「演劇」は漢字です。メール kyonoengeki☆gmail.com(☆を@に変えてください)またはフォーム でも受け付けています。

お送りいただいた体験談は、ラジオまたは『きょうの演劇』公式ウェブサイトまたはSNSで紹介させていただきます。

次回予告

来週1月29日(土)は、ワークショップ参加作品『ひとりの夜』をお送りする予定です。どうぞお楽しみに。

 

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