3月26日(土)放送:『春になる』

『春になる』

春ですね。春が来ますね。春になりますよ。春はもうすぐそこです。
あなたに会えなくなってから、何度目かの、春がやってきました。
泣いても笑っても、毎年、春はやってきます。
春がきた 春がきた どこにきた
山にきた 里にきた 野にもきた
でもね、まちには春が足りない。
だから、春の色を身にまとって、まちへ出かけましょう。

「春の色」と聞いて、何色を思い浮かべますか。
菜の花色に、タンポポ色。若草色に、若竹色。春の小川はさらさら行くよ、の水色。川岸に咲くのは、すみれ色。霞がかった富士山の色。エメラルドのような海の色。朧月夜のやわらかな銀色。春の時雨を降らせる、あたたかな雨雲の色。雲間から覗く淡い空色に、ようやく蕾を開き始めた、ほんのり酔ったような桜色。

枯れ木に花を咲かせましょう。
街角に花を咲かせましょう。
悲しい人も、寂しい人も、たとえ心の中では泣いていても。
春の色をまとって、まちを通り抜けましょう。
あなたを見かけた誰かの心に春風が吹くように。
そのとき、あなたの心にも同じ風が吹きます。

つまり、きょうのあなたは、春の妖精です。
妖精が恥ずかしければ、春の妖怪でもいいですよ。
春の妖怪は、昼間から現れて、いつもほろ酔いで、少しシャイなようです。
そういう人、駿府城公園とか常磐公園あたりに、いつもいますよね。
あれはみんな、春の妖怪、もとい、春の妖精なんですよ。

よかったら、きょうの午後三時、桜の下で会いましょう。
身にまとった色でわかるから、言葉を交わす必要はありません。
まちあわせのような、テレパシーのような、昔の約束のような。
ラジオでつながる私たちの、ひみつのあそびです。

春ですね。春が来ますね。春になりますよ。春はもうすぐそこです。
泣いても笑っても、今年も、春はやってきます。
だから、あなたが誰よりもまっさきに春になって、まちに飛び出してください。
心も体も春の色になって、まちをいろどってください。
そこから、見知らぬ私に「春が来たよ」と知らせてください。


聴き直し

当日の放送は以下You Tubeまたはradkoタイムフリーから聴くことができます。

今回の戯曲を読み上げてくれたのはSPAC-静岡県舞台芸術センターの俳優・加藤幸夫さん。やわらかな声が耳に心地よく、春の空に似合います。

今回の舞台

戯曲に登場した駿府城公園や常磐公園をはじめ、静岡県内各地で、桜の花が咲き始めています。そんな、あなたの身近な桜の木の下が今回の舞台です。

できたら、きょうの午後三時。都合がつかない人はそれより前でも後でも構いません。あなたを見た人の気持ちが明るくなるような、春色の服や帽子、スカーフ、ショール、靴などを身にまとって、桜の下へ立ってみてください。

「春色ってどんな色…?」という人は、戯曲の中で紹介されている色を参考にしてください。菜の花色、若草色、若竹色、水色、すみれ色、エメラルドグリーン、桜色など…あなたの好きな春色を身に着けて、まちゆく人やあなたを見かけた人に春らしい気分を届けましょう。

こんな色も春色

上演のコツ

「きょうの演劇」プロジェクトは、静岡市の取り組む“誰もが主役のまちづくり“「まちは劇場」の一環として行われています。

2020年の春から、私たちの日常は大きく変わりました。行きたくても行けない場所、会いたくても会えない人、さみしくてもがまんする場面がたくさんありました。それでも、まちと人との出会いを少しでも生み出し続けたい。そんな思いでラジオを通じて「まちをつかったひみつのあそび」をお送りしてきました。

今週末はあいにくのお天気ですが、あなたも花咲かじいさんになったつもりで、灰色のまちに春色の風を吹かせてください!

上演して(やって)みたよ! で、どうすればいいの?

きょうの演劇では「こんなふうにやってみたよ!」という体験談や、感想を募集しています。ラジオネームと、やってみた人は写真を添えてTwitterInstagramで投稿してください。

今回は桜や、あなたの身につけた春色の写真を添えて。SNSに投稿する際はハッシュタグ「#きょうの演劇」と「#春になる」を添えてください。「きょうの」はひらがな、「演劇」は漢字です。メール kyonoengeki☆gmail.com(☆を@に変えてください)またはフォーム でも受け付けています。

お送りいただいた体験談は、ラジオまたは『きょうの演劇』公式ウェブサイトまたはSNSで紹介させていただきます。

次回予告

「きょうの演劇」はリニューアルのため、4月はお休みします。もっと“まちを劇場”にするべく、パワーアップして5月に戻ってくるので、楽しみに待っていてくださいね。またラジオでお会いしましょう!

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