10月16日(土)放送:「神様たちの宴会」

「神様たちの宴会」

日本酒はお好きですか。
土曜の朝っぱらから何ですが、今夜一杯、付き合いませんか。
ああ、まだ飲みませんよ。さっそく、おちょこなんか用意しちゃって、気が早いねえ。今夜ですよ、今夜。

今夜ね。静岡の神様たちが集まって宴会するらしいんですよ…うわさですけどね。ほら、来月は神無月っていって、みんな出雲に出かけちゃうから、その前にちょっと集まっとこうって。
いやまあ、それは嘘ですけどね。でも、そんなつもりで飲んだら、楽しいじゃないですか。それに、みんなで飲んでたら、ほんとに神様が集まってきて、宴会が始まるかもしれませんし。瓢箪から駒って、言うでしょ。
だからね、今日は神様たちの宴会ってことにして。今晩、南の空に月がかかるころ。静岡のお酒で乾杯といきましょう。来週まで待てば満月ですが、ちょっとくらいまんまるでなくても、月は月。互いの盃にひとつの月を映して、共に飲み干そうではないか。遠き友よ!

酒はどれにするかって? やっぱりね、あっちの酒は飲んでこっちの酒は飲まない、なんてやると神様がヤキモチ焼きますから、静岡ぜんぶの酒蔵の、ぜんぶの銘柄。…いけない? 倒れちゃう? まあそうでしょうね。そしたらみんなで手分けして、静岡じゅうの、できるだけいろんなところのお酒を、飲みましょうよ。

天竜川、大井川、安倍川に富士川、狩野川。それに、富士山の雪解け水。中でも安倍川の伏流水は「日本一おいしい」なんて言われますからね。安倍川の生んだ銘酒といえば、萩錦。駿河酔、登呂の里、南アルプスなんていろんなお酒があって、楽しいね。それから君盃。もみじ、天領の瀧なんてのもありますよ。江戸時代から静岡の人たちに愛されてきたお酒といえば、忠正。安倍街道もいい。それに天虹、萩の蔵、曽我鶴、喜平も飲んじゃおう。興津川なら臥龍梅、羽衣の舞に静ごころ。由比川だったら伝統ある英君、神沢川には正雪あり。
とことん地元にこだわりたければ、県内限定の「静岡酵母」もあるし、「誉富士」って酒米も作っていますからね。静岡にはおいしいお酒が、まだまだいっぱいありますよ。さ、どれにします?

飲めない人は、舐めるだけでも、薫りだけでも楽しんで。そのあとお料理に使ってくれても、お風呂に入れて酒風呂なんてのも乙なもんです。

静岡といえば水どころ、知る人ぞ知る酒どころ。遠き友との乾杯は、神のみぞ知る宴かな。それでは、今晩。乾杯は、南の空に月がかかるころ。約束ですよ。


聴き直し

当日の放送は以下You Tubeまたはradkoタイムフリーから聴くことができます。

今月(2021年10月)の戯曲を朗読してくれているのはSPAC-静岡県舞台芸術センターの俳優・小長谷勝彦さん。お酒が大好き、飄々として陽気、冗談めかして言っているけど、どこか本当に神様の会話を盗み聞きしていそう。そんな仙人のような主人公を演じてくれました。

今回のテーマ

今回のテーマはずばり「静岡の地酒」。戯曲にもあるように豊富な名水で知られる静岡ですが、その水を活かした酒造りも盛んなことは、意外と知られていません。その実力は、ツウの間で「吟醸王国」と呼ばれるほどだとか。

神前にお酒を供えるしきたりや、お供えしたお酒をお神酒としていただいてご加護を得る行為、三三九度をはじめ儀式やお祝い事で日本酒を飲む習わしなどからも分かる通り、神様と日本酒の間には深いかかわりがあります。神様はきっとお酒が大好きなんだろうな、今晩はみんなで宴会しているんだな、と想像すると、いつものお酒も楽しくなりそうですよね。

戯曲を書く上では静岡在住のライターでしずおか地酒研究会主宰の鈴木真弓さん著『杯が満ちるまで―しずおか地酒手習帳』(静岡新聞社、2015)を大いに参考にさせていただきました。また地域の酒屋さんにも、電話取材などでご協力いただきました。この場を借りて御礼を申し上げます。

上演のコツ

まずは静岡のお酒を手に入れること! お気に入りの銘柄でもいいし、この機会に、初めて飲む銘柄に挑戦してみてもいいでしょう。特に思いつかないよ、という人はぜひお住まいに近い酒蔵の、つまり地元のお酒を試してみてください。

なかなか遠方との行き来が難しい今だからこそ、遠くに暮らす友と、同じ月を盃に浮かべて乾杯を交わす。そんな飲み方も一興ではないでしょうか。一方、緊急事態宣言も解除されました。これまで通り基本的な感染対策には注意しながら、地元のお店で、ご自宅で、おいしいお酒を楽しんでくださいね。

飲めない人は薫りだけでも楽しんだ後、浴槽のお湯に入れて酒風呂に。ぽかぽか温まってお肌すべすべになるそうですよ。

上演して(やって)みたよ! で、どうすればいいの?

きょうの演劇では「こんなふうにやってみたよ!」という体験談や、戯曲の感想を募集しています。ラジオネームと、やってみた人は写真を添えてTwitterInstagramで投稿してください。あなたの好きな・気になる静岡のお酒の銘柄を、ぜひ教えてください。

SNSに投稿する際はハッシュタグ「#きょうの演劇」を添えてください。「きょうの」はひらがな、「演劇」は漢字です。メール kyonoengeki☆gmail.com(☆を@に変えてください)またはフォーム でも受け付けています。

お送りいただいた体験談は、ラジオまたは『きょうの演劇』公式ウェブサイトまたはSNSで紹介させていただきます。

次回予告

次回10月23日(土)は、安倍川の足跡をたどる、まち歩きラジオツアー(?!)をお届けします。どうぞお楽しみに。

また、きょうの演劇では皆さんの考えた戯曲も募集しています。選ばれた作品はラジオで放送されますので、詳細をご確認の上、ぜひふるってご応募ください。

 

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